ずっと昔、約束した
ずっと先も、一緒にいようねって

ずっとずっと、私たちは変わらないでいよう
























黄色い絨毯の上で
      
ジュウタン

























−−−−−−−−−−−−−−−

宛先 : ジロちゃん
件名 : (no title)
本文 :
ついたよ〜

−−−−−−−−−−−−−−−
























ピンポーン

私はとある家のチャイムを押して寒い道路に立っていた。
手には学校のカバンと携帯電話を持って。

冷たい風が吹いて身震いをしていると、家の中からドンドンという階段を下りる音が聞こえた。


ガチャッ


「さ、入ってよ。」
「よっす!今日すっごい寒いねー!」

にっこりと笑うジロちゃんが出迎えてくれて、私を部屋まで招いてくれた。
部屋の扉を開けるとそそくさにジロちゃんが向こうを向いた。

「ちょっと待っててね、今お菓子持ってくるから!」

そう言ってドアを閉めると、また階段を下りる音が聞こえた。
私は昨日来たばかりのこの部屋を見回すと、明らかに何かが違う感じがすることに気がついた。
毎日のように来ているせいか、その違和感の正体はすぐに見つかった。

しばらくベッドに座っていたら廊下を歩く音と同時に扉が開いた。

「お待たせ〜。」

ジロちゃんがにっこり笑ってお皿いっぱいのお菓子をテーブルの上に置いた。

「ねぇジロちゃんっ!」
「えへへー、気づいた?」

私は声を弾ませて言った。



「この黄色い絨毯、あの時のやつだよね?!」

「ピンポーン!」


テーブルの下に敷かれたそれは、確かに私たちが幼稚園時代に使った黄色い絨毯だった。
私とジロちゃんは幼稚園からずっと一緒にいて、よくその絨毯の上で寝たものだ。
その絨毯を見ていると昔のことが鮮明に思い出される。

「懐かしいねー!」
「でしょでしょ?!昨日ね、棚を整理してたら出てきたんだ!」
「あ、そういえばアレ!」
「何?」
「今日学校で言ってたヤツ!見つかったんでしょ?」
「あ、幼稚園のころのアルバムね!」

ジロちゃんはすぐさま何もない勉強机の本棚に手を伸ばした。
そしてそこからある一冊の分厚い本を手に取ると、私の方に持ってきた。

「これこれ!」
「うわ、懐かしー!」


"氷帝学園幼年部 卒園アルバム"


表紙にでかでかと書かれたその文字を見て、私たちは心を弾ませた。

「昨日見つけたんだけどね、と一緒に見ようと思ってまだ見てないんだよ!」
「そうなの?!エライねジロちゃん!」
「でしょ〜!」
「それより早く中見ようよ!」
「オッケ〜!」

私たちは心臓をドキドキさせながら分厚い表紙をゆっくりと開いた。



「あっ!これ監督じゃない?!」
「ほんとだ〜!」
「若ーい!」
「あ、コレ跡部だっ!」
「超カワイー!!このころの景吾からは今の憎たらしい顔なんて想像できないね!」
「それ本人の前で言ったら怒られるよ〜!」
「言っちゃダメだよジロちゃん!」
「しょ〜がないなぁ〜。」
「あ、ジロちゃんと私だ!」
「あ、ホントだ〜!」
「一緒に寝てるねー!・・・あ、この写真のヤツって!」

私たちは目を見合わせた。



「「この絨毯だ!」」



声が揃って、私たちは同時に笑い出した。
そしてその絨毯の上に寝転がった。


「ほんっと懐かしいねー!」
「うんうん!この絨毯、気持ちE!」
「そういえばさ、昔私とジロちゃんここで将来の夢のコト話しなかった?」
「あー、したした!」
「景吾にバカにされたよねー。」
「うん。跡部は"しゃちょうになる!"ってずーっと言ってたよね!」
「そうそう。それで私たちは・・・。」



























『きょうはせんせい、しょうらいのゆめのおはなししてたね!』
『そうだね!』
『すきなものになるんだよね!』
『そうそう!』
『わたしはね、おっきくなったらだいすきなケーキになるの!』
『ケーキ?なれるの?』
『だってせんせいはすきなものになりなさいっていったよ!』
『そっか!、ケーキになれるといいね!』
『うん!それで、ジロちゃんはおっきくなったらなにになるの?』
『オレはね〜、おっきくなったらとうめいにんげんになるの!』
『どうして?』
『だってね、とうめいにんげんになったらかべとかすりぬけれるんだよ!』
『かべをすりぬけてどうするの?』
『おひるねのじかんになったらね、とうめいになってほいくるーむからぬけだすの!』
『でもジロちゃんおひるねすきなんじゃないの?』
『すきだよ!でもほいくるーむでおひるねするのはやだ!』
『わたしも!ジロちゃんのおうちのこのじゅうたんがいい!』
『だからね、とうめいになってここにくるんだ!そしたらここでねれるでしょ!』
『そっか!じゃぁわたしもとうめいにんげんになりたい!』
『ケーキにはならないの?』
『うん!ジロちゃんといっしょにとうめいにんげんになりたい!』
『そっか!じゃぁいっしょになろうね!』
『うん!』

『バーカ、おまえらなにいってんだよ!』

『けーごだ!』
『あとべだ!』
『あのなぁ、ケーキになんてなれないんだぞ
『なれるもん!せんせいがすきなものならなれるっていってたもん!』
『ケーキはしょくぎょうじゃないんだぞ!』
『しょくぎょうってなに?』
『とにかくなれないんだ!ケーキはにんげんじゃないだろ!』
『な、なれるもん!』
『バーカ、そんなこといつまでもいってるからバカなんだぞ!』
『ば、バカじゃないもんっ!』
はバカじゃないよ!』
『ジロちゃん!』
はオレといっしょにとうめいにんげんになるんだ!』
『そうだよ!わたしはジロちゃんととうめいにんげんになるんだよ!』
『とうめいにんげん?』
『うん!とうめいにんげん!』
『と、とうめいにんげんなんてなれるもんかっ!』
『なれるよ!とうめいにんげんはにんげんでしょ!』
『た、たぶんなれないよ!』
『なれるよ!』
『・・・な、なれないもん!おとうさんにきいてくるもん!』
『あとべなんかどっかいっちゃえ!』
『けーごなんてしゃちょうになっちゃえ!』
『バーカ!バーカ!おまえらなんかバカだ!』
『バカだもん!』
『バカでもいいもん!』
『さっきバカじゃないっていってただろ!』
『どっちでもいいの!』
『く、くそっ!』



『いっちゃったね。』
『なれるよね、とうめいにんげん!』
『なれるなれる!』
『おっきくなってもとうめいにんげんになって、ずっといっしょにいようね!』
『うん!』



























「ほんっとあの頃は可愛かったよね〜!」
「景吾は相変わらず可愛くないガキだったけどね!」
「透明人間になるってずっと言ってたよね!オレたち!」
「そぉだねぇ。なれるかなぁ?」

「あ、そうそう!」

ジロちゃんは寝転がっていた体制を立て直し、体を置き上げた。
そしてテーブルのお菓子を一つつまんで口に入れた。

「誰に聞いたかは覚えてないんだけど、」
「うん。」
「こんなお話聞いたんだ!」
「どれどれ!」
「ちゃ〜んと最後まで聞いててね!」
「うん!」





この世界のどこかに透明人間の薬を研究している人がいました。
ある日、ついにその博士は薬を作るのに成功しました。
でもその薬を決して使おうとはしませんでした。






「なんで?」
「ま、最後まで聞いてて!」








ある日、悪い人がその噂を聞いてその博士のおうちに薬を盗みに来ました。
その悪い人は研究室を探し回りました。
そのとき、机の上に大事そうに置いてある透明人間になる薬を見つけました。
悪い人が持って帰ろうとしたとき、博士に見つかってしまいました。
博士は『返せ』と言いましたが、もちろん悪い人は返すわけがありませんでした。
そして悪い人は博士に銃口を向けました。
博士は動くことができず、その悪い人に何度も何度も言いました。
『それを使ってはいけない』と。
悪い人は聞く耳を持たず、博士の前でその薬を飲み干しました。
悪い人はニヤリと笑って、みるみるうちに姿が薄れていきました。









「透明人間になっちゃったの?」
「ここからが大事なの!」












悪い人は喜びました。
ついに透明になれた、と。
しかし、その悪い人が完全に透明になったとき、急に自分の足が床を通り抜けました。
その悪い人は透明になったせいで地面まですりぬけてしまったのです。
重力のせいで、どんどん地球の底へ落ちていきました。

そしてその悪い人は二度と地上に戻ることはできませんでした。

博士も、二度とそのような薬を作らないと心に誓いました。



















「・・・こんなお話。」
「・・・。」

私はその話を聞くと、なんだかやるせない気持ちになった。
なんて言葉にしたらいいのかわからなくって、とにかく胸が締め付けられる気持ち。

なんだろう。



「この話聞いたときにね、オレやっぱり透明人間になるのやめた!」
「・・・そうだね。私もやめる!」
「それからずっと考えてたんだ。」

ジロちゃんは私の方を向いて、ニコって笑った。
















「透明人間になんてならなくっても、ずっととこの絨毯で寝ればいいじゃんって思った!」













「・・・そうだよね!」





























「だから、おっきくなってもずーっとずーっと一緒にいようね!」
「うん!私はどこにも行かないよ!」
「オレも!」
「おっきくなってもジロちゃん変わらないでね!」
「変わらないよ!オレはちっちゃいころから何にも変わってないよ!」
「そうだよね!」



も変わってないし、これからも変わらない!」




「おじいさんになってもおばあさんになっても、ずーっと一緒だよ!」


「うん!」




























ジロちゃんといると、自然と心が安らかになる。
いつまでも隣にいて、私を癒してほしい。

私、どこにも行かないから
ジロちゃんもどこにも行かないでね








何年後も、一緒にこの絨毯の上で笑っていようね。












ユウナ様からいただきました!
ありがとうございました!!
もう感動です!!ジロちゃんかわEー!!
しかも私が気に入ってしまった『メール』まで入れていただけてvvv
本当にうれC〜です!!
またぜったいキリ番GETしに行きますっ!!